【カンボジア指定募金】第4期報告書:ご支援による成果(2024)

皆様のご支援による成果(2024)

2024年までに皆様からお寄せいただいた「暴力と虐待からカンボジアの子どもたちを守る」指定募金により、2024年(最終年)には以下のことが実施できました。

活動 1:ポジティブ生徒指導法と効果的なクラス運営に関する教員研修

プロジェクト開始以来、対象となる7つの州(バッタンバン、プレイベン、カンポット、コンポンチャム、シエムリアップ、ストゥントレン、トボンクム)で合計 3,727 人の教師(女性1,886人)が、ポジティブ生徒指導法と効果的なクラス運営の訓練を受けました。この研修によって 113,290 人の生徒(53,834 人の女子生徒)が直接その恩恵を受け、このプログラムの当初の目標であった教師1,500人、生徒50,000人を大幅に上回りました。
この成果は、2022 年から対面式とオンライン式の両方を組み合わせたハイブリッドなトレーニング方式を導入したことで可能となりました。例えば2024年、ユニセフと教育・青年・スポーツ省(MoEYS)は、コンポンチャム州とトボンクム州の3郡の107校から、1,331人の 小学校教員(女性882人、男性449人)が参加する研修を実施しました。これらの教師は、効果的なクラス運営とポジティブ生徒指導法に関するオンライン・トレーニングを修了し、対面式セッションに参加しました。その結果、この研修はオンラインと対面式の両方を通じて相当数の教師に行き渡り、間接的に38,097人の子どもたち(女子18,090人、男子20,007人)に恩恵をもたらしました。これらの研修の目的は、効果的に教室を運営し、喧嘩を非暴力的に解決し、生徒と教師の良好な関係を築けるようにすることです。

トボンクム州スオン郡の学校において、ポジ
ティブ生徒指導法に関する教師の研修が行わ
れた。(©UNICEF Cambodia/2024/
MoEYS)

教育・青年・スポーツ省のトレーナーによ
る、コンポンチャム州バテアイ郡の学校での
ポジティブ生徒指導法に関する教員研修。
(@UNICEF Cambodia/ 2024/ MoEYS)

 活動2:ポジティブ子育て法の研修

プロジェクト開始以来、7つの支援対象州から7,407人の保護者(女性5,396人、障害者24人、うち女性8人)がポジティブ子育て法の研修に参加し、推定14,307人の子どもたち(女の子6,450人、うち障害者28人、うち女の子16人)に恩恵をもたらしました。この成果は、親と保護者2,200人、子ども6,500人という当初の目標を大幅に上回るものでした。
2024年には、52人の新たなコミュニティ調整員(女性27人、男性25人)が、ポジティブ子育て法ツールキット・レベル1(普遍的予防法)の研修を受け、1,800人の親や保護者(女性1,255人、男性545人、うち障害者10人、女性2人)に地域での子育て活動を指導できるようになりました。その結果、推定3,273人の子どもたち(女の子1,724人、障害者5人を含む)が直接的な恩恵を受けました。この成果は、ツールキット・レベル1のセッションに参加しようとする保護者のコミットメントと、国レベルおよび自治体レベルでの政府の強力なリーダーシップのおかげで、2024年の目標である1,248人の保護者数上回りました。

バッタンバン州モウン・ルッセイ郡での子ども
の発達に関する保護者グループ会議(©UNICEF
Cambodia/2024/MoWA)
シエムリアップ州ポペル郡で、親の役割
と責任について話し合う保護者の会
(©UNICEF Cambodia/2024/MoWA)

成果のまとめ

以下の表は目標に対する報告期間中の実績を示したものです。
活動内容 受益者 目標値 2020 2021 2022 2023 2024 合計
1 ポジティブ 生徒指導法 教育を受けた教師 1,500 0 600 1,067 729 1,331 3,727
恩恵を受ける子ども 50,000 0 20,000 35,556 19,637 38,097 113,290
2 ポジティブ 子育て法 研修を受けた保護者 2,200 1,248 1,248 1,550 1,561 1,800 7,407
恩恵を受ける子ども 6,500 2,674 2,110 3,100 3,150 3,273 14,307

課題

子どもたちのしつけとして暴力を使うことをめぐる、深く根付いた社会的、文化的、ジェンダー的規範を変えることは、とても複雑で困難な課題です。こうした問題に取り組むには、エビデンスに基づく強力な、分野を超えた協力を含む、多面的なアプローチが必要です。変化をもたらすための主な課題のひとつは、長期的なプログラミングが、暴力によらないしつけの方法の有効性を実証できる、信頼できるデータと証拠に基づいて行われるようにすることです。このエビデンスは、支援の設計と拡大に情報を提供するためだけでなく、財政的・人的リソースの両面から、政府による持続的な投資を引き出すためにも極めて重要です。このため、ユニセフはポジティブ子育て法の包括的な調査を実施しています。
さらに、こうした支援を成功につなげるには、さまざまな分野の積極的な関与と協力にかかっています。これには、女性省(MoWA)、教育・青年・ スポーツ省(MoEYS)、地方自治体と緊密に連携し、一貫性のあるメッセージの発信、リソースの配分、能力強化を確実にすることも含まれます。しかし、州や政府機関によって能力レベルが異なるため、一律の実施と成果を達成することが大きな課題となっています。ユニセフは、このような課題を克服するために、これらの省庁や国の行政機関を支援する上で、引き続き重要な役割を果たしています。これには、データ収集と分析のためのシステムを強化すること、地方自治体の技術的・人的リソースの能力を強化すること、そして子どもの保護の取り組みへの投資拡大を政府へ提唱することが含まれます。子どものデジタル搾取や気候変動の影響といった新たな問題にも対応できるようにするためにも、こうした支援がユニセフにとって引き続き重要な点となっています。

今後の計画

子どもたちに対する暴力(VAC)をなくすことは、引き続き 2024~2028 年までのユニセフ・カンボジアの国別開発プログラムの中核となっています。数十年にわたる経験をもとに、ユニセフは政府機関、宗教指導者、市民社会組織、そして国際的な支援者と、深く信頼できるパートナーシップを築いてきました。ユニセフ・カンボジア事務所は、教育や女性関連などの関係省庁だけでなく、以下のような政府機関への支援にも引き続き重点を置いています。
• 調査の結果に基づき、ポジティブ子育て法を見直す。
• 女性省がポジティブ子育て法のコスト試算を更新するのを支援し、この結果をプログラムの規模拡大に向けた政府への資源投入の提言に活用する。
• 女性省が、気候変動の影響や有害な慣行(児童婚)など、新たに生じている問題を盛り込み、ポジティブ子育て法ツールキットを更新するのを支援する。
• ユニセフの地方自治体レベルでのアプローチを通じて、自治体トップのリーダーシップを強化し、ポジティブ子育て法を実施するための多部門の指導と調整を行う。
• 引き続き教育・青年・スポーツ省(MoEYS)を支援し、ハイブリッド方式を用いた学校でのポジティブ生徒指導法プログラムの規模を拡大し、子どもたちにより安全な学習環境を提供する。

 

現地のストーリーI:学校におけるポジティブ生徒指導法プログラム

(1) カンボジアの安全な教室のルールを書き換える

ポジティブ生徒指導法と子どもの保護の取り組みは、カンボジアの子どもたちが守られ、自信を持ち、恐怖から解放されたと感じる、より安全な学校環境を作り出しています。

13 歳になるスレイ・モッチさんは、小学校入学時に導入された「ポジティブ生徒指導法」によって形成された学校環境の中で育ちました。それ以前の学校では、多くの生徒にとって恐怖を感じたり、厳しい指導を受けることが当たり前でした。しかし今、プレイ・タモク小学校の6年生であるスレイ・モッチさんは、授業中に自信を持って手を挙げて質問をしています。沈黙と恐怖の時代は終わったのです。今日、彼女のような子どもたちは、安全で守られていると感じられる環境で学んでいます。
歴史的に、カンボジアの学校では厳格な規律に依存しており、しばしば規律は体罰と同一視され、生徒の間に恐怖を生み出してきました。このような現実を受け、ユニセフ・カンボジア事務所は 2015 年、教育・ 青年・スポーツ省の支援を受けて、ポジティブ生徒指導法プログラムと子どもの保護の取り組みを開始し、暴力に頼らず学校運営をするスキルを教師に身につけさせました。こうした努力にもかかわらず、カンボジア人口保健調査2021-22 によると、1 歳から 14 歳の子どもの 59%が、家庭で大声を出したり怒鳴ったりするなどの心理的な暴力を経験していることがわかりました。同様に、「学校におけるポジティブ生徒指導法評価プログラム2023」では、28%の生徒が教師から怒鳴られたり、叫ばれたりしたと報告し、32%が棒や定規で叩かれるなどの体罰を経験または目撃していることが明らかになりました。男子生徒は引き続き、体罰や暴言、心理的懲罰のレベルが高くなっています。
ポジティブ生徒指導法プログラムは、考え方や行動に重要な変化をもたらし、全体として 2021年までに 1 万 3,000 人以上の校長と教師を研修、46 万人の子どもたちがその恩恵を受けました。2023 年に実施された「学校におけるポジティブな生徒指導法プログラム」の調査では、教師の 69%が非暴力的な指導方法を用いており、91%が怒りのコントロールにおいて改善を示していることが明らかになりました。一方、カンボジア政府は、「子どもに対する暴力の防止と対応のための国家行動計画」(2017-2021 年)と「学校における子どもの保護政策行動計画」(2019-2023 年)を通じて、こうした変化を確固たるものにするために取り組んできました。
各学校は、子どもの保護方針を策定し、子どもの保護担当者を任命することが求められています。この流れに乗っとり、政府は2024年から2028年までの行動計画を導入し、学校や家庭での暴力を防止するための報告・監視システムを強化、子どもたちにとって安全な環境づくりへのコミットメントを深めています。
さまざまなパートナーからの支援を受けて、こうした取り組みはカンボジアの子どもの保護と教育戦略の中心となっています。その結果、かつて子どもたちにとって恐怖だった教室は、安心して熱心に学べる空間へと変貌を遂げました。

 

(2) ポジティブな変化を受け入れる:有害な社会規範から子ども中心の規範への移行

ポジティブ生徒指導法プログラム担当であるシネン・ムオン先生
(カンポン・ポピル小学校)

依然として、カンボジアの学校の規律文化を変えるのは容易ではありません。多くの教師にとって、体罰は彼ら自身が教えられた習慣として深く根付いていました。カンボジア人口保健調査(CambodiaDemographic and Health Survey 2022)によれば、カンボジアの成人の27%が、子どもを育てるには体罰が不可欠だと考えていることがわかりました。
プレイ・タモク小学校のトナ・ホーン先生のような教師は、このことをよく知っています。同校の子どもの保護に関する中心的存在である彼女は、教室での幼少期を、後悔を織り交ぜながら振り返ります。「私はクラスでの秩序と尊敬を保つには恐怖しかないと思っていました。必要だと思って声を荒げたり、体罰を加えたりしていました。でもポジティブ生徒指導法を学んでから、すべてが変わりました。今では生徒と先生の間に信頼と理解があります。生徒たちが勉強面だけでなく、人間的にも成長するのを見るのは素晴らしいことです。」カンポン・ポピル小学校の司書で子どもの保護の担当であるシネン・ムオン先生は、かつて幼少期に教師から厳しい体罰を受けたことを思い出します。「罰として学校中を何周も走らされました」と彼女は言います。彼女は自分の生徒たちにも同じような指導をしていたことを後悔しています。

(3) 生徒たちの声を広げ、力を与える活動

プレイ・タモク小学校の6年生の生徒たち

スレイ・モッチさんのような生徒にとって、ポジティブ生徒指導法は彼らの学校生活全体を形作ってきたものでした。現在プレイ・タモク小学校の6年生であるスレイ・モッチさんは、成績がクラスで1位、県で10位になったことを記念して彼女の叔父から贈られた赤い腕時計を誇らしげにつけています。以前の世代とは異なり、スレイ・モッチさんと彼女のクラスメイトは厳しい規律や体罰を経験したことがありません。代わりに、質問や助けを求めることが奨励される学習環境を楽しんでいます。大人になったら言語学者になるのが夢だというスレイ・モッチさんは「先生は、私が理解できるように説明してくれます。 」といいます。
クラスメイトのタバスさんは数学の教師になるのが夢です。彼もまた、懲罰ではなく指導に重点を置く学校から恩恵を受けているひとりです。「悪さをしたり宿題をやらなかったりすると、先生はその影響を説明してくれます。 自分が何をすべきかを理解するのに役立っています。私はいつか先生になりたい。自分の先生が私を奮い立たせてくれるのです。」と彼は言います。
ムオン先生が教鞭をとるカンポン・ポピル小学校では、この学校に通う13歳のファビスさんが学校生活での経験を大切にしています。ファビスさんは科学、技術、工学、数学(STEM)の科目が大好きで、エンジニアになりたいと思っています。「先生は決して怒鳴ったりしません。「先生はいつも優しいから、もっと勉強したくなるのです。」親友でクラスメイトのヴィチャラさんは、1年生の教師になることを目指しています。「先生がいるから、学校でも安心していられます。」
2020 年に受けたポジティブ生徒指導法の研修を振り返り、ホーン先生は、生徒の生活態度を重視し、落ち着く時間を取ることでフラストレーションをコントロールし、厳しい体罰を避けるという、現在実践している教室運営方法を話してくれました。彼女の生徒たちは、言われなくても教室の清掃などを自ら行うようになりました。
カンボジアの学校に最近導入された子どもの保護ガイドラインでは、学校が誰にとっても安全な場所にするという枠組みに沿っています。今年初め、カンボジア全土の教師、校長、コミュニティ・リーダーが、虐待の被害者を特定し、適切に通報する方法についての研修会に参加しました。今、生徒たちは、家庭であれ学校であれ、暴力を恐れることなく報告できることを理解しています。生徒たちは自分たちの声が重要であることを学び、安全な環境下で尊重される権利を持って学校生活を送れるようになりました。
プレイ・タモク小学校とカンポン・ポピル小学校の両校では、教師がより安全でサポートのある学習環境を育んでいます。「こういったプログラムを導入して以来、この学校の雰囲気は完全に変わりました」と、プレイ・タモク小学校のラタ・ケック校長は言います。「同校の出席率は現在 100%で、生徒たちが恐怖のあまり学校を避けていた時代から大きく改善されました」と誇らしげに語ってくれました。

 

(4) 新世代の子どもたちとともに未来を見据える

ポジティブ生徒指導法と子どもの保護ガイドラインを採用する学校が増えるにつれ、このアプローチがカンボジア全土に広まり、より安全でサポートのある学習環境が生まれることが期待されています。カンボジアの生徒にとって、この変化は新しい教育スタイル以上のものです。

ポジティブ生徒指導法の調査報告書によると、子どもたちがポジティブでサポートのある環境にいる場合、学校にとどまる可能性が高くなり、学業成績が向上し、共感力やチームワークといった重要な社会的スキルが身につくといいます。
クメール・ルージュ政権下の暴力的な過去からいまだ癒えることのないこの国で、ポジティブ生徒指導法と子どもの保護政策は、単に安全な教室を提供するだけではありません。スレイ・モッチさんのような生徒たちは、恐怖から解放され、自信を持って学ぶことができる学習環境の中で成長しており、世代を超えた暴力の連鎖を断ち切る準備をしています。
「ポジティブ生徒指導法のおかげで、学校で安心して生活できるようになり、また自分を信じることができるようになりました」というスレイ・モッチさんは、2024年11月から新しい学校で7年生になるのを楽しみにしています。

世代を重ねるごとに、カンボジアは暴力の連鎖を断ち切り、すべての子どもたちが恐怖ではなく、希望と機会に満ちた学校環境で成長できるようになる日が近づいています。

 

ヴィチャラさんと彼女のクラスメイトたちは、プレイベン州のコンポン・ポピル小学校で、
次のコンピューターの授業が行われる教室に入ろうとしています。

現場のストーリーII:ポジティブ子育て法プログラム

体罰から愛情へ:広がるポジティブ子育て法

ポジティブ子育て法を地域の数千人に浸透させるため、自治体職員が模範を示しています。

メロディカを吹く3歳の息子とポジティブ子育て法を実践するチャイ・リケオさん

「以前は、愛とはコントロールすることだと思っていました。今は、愛とはつながりだと思っています。」とチャイ・リケオさんは言います。
カンボジアの午後の柔らかな日差しの中、リケオさんは3歳の息子ファニスくんのそばにしゃがみこみます。周囲にはペン、ノート、ロケット型の筆箱、水のボトルが置いてあります。ファニスくんは集中してメロディカ(小さな鍵盤楽器)を弾き、彼女は楽譜を見ながら優しく教えています。
リケオさんは、女性省と全国幼児ケア開発委員会が実施するユニセフのポジティブ子育て法から学んだスキルとツールを活用しています。これらの新しい取り組みは、彼女がかつて不可能だと思っていた忍耐と理解をもって息子たちを育てるのに役立ちました。
ファニスくんとの遊びのひとときは、リケオさんにとってだけでなく、子どもに対する暴力が蔓延しているカンボジアにとっても転機となりました。570 万人の子どもたちが暮らすカンボジアでは、半数以上が身体的虐待を経験しているといわれています。
「昔は怒鳴ったり、脅したり、殴ったりもしました。それが良い子どもを育てる唯一の方法だと思っていたのです。私はすぐにカッとなってしまいます。理解ではなく従わせることに重点を置いていました。」とリケオさん。
2020 年、州女性局の副局長だったリケオさんは、ポジティブ子育て法のトレーナーとなり、人生が変わりました。ユニセフ・カンボジア事務所が支援し、神奈川県ユニセフ協会をはじめとするその他のドナーから資金援助を受けているこのプログラムは、カンボジアの子どもに対する暴力を減らすための大きな取り組みの一環です。
このプログラムは開始以来、カンボジア全土で7万8,200 人以上の親や保護者に対して研修が実施され、忍耐や子どもの理解、オープンなコミュニケーション方法を教え、親が子どもたちに望む行動の模範となるよう促しています。
「初めて私がルールを強制するのではなく、きちんとルールの理由を説明したとき、息子は私を別人のように見ました」とリケオさんは微笑みながら振り返ります。「そしてある意味、本当に別人だったと思います。」
かつては彼女の厳しい視線に緊張していた末っ子も、今では彼女の温かい手に身を預けています。リケオさんの家庭におけるこの変化は、カンボジア全土で高まりつつあるムーブメントの一部といえます。
「私たちは親たちに、『子どもは親をしっかり見ているし、親と同じように行動します』といつも言います。「私たちが忍耐と理解の模範を示すことで、子どもたちはそれを学ぶのです。」リケオさんにとって、これは子育てのスタイルを完全に変えることを意味しました。怒鳴ったり脅したりするのではなく、会話をし、説明し、遊び、耳を傾けるようにしたのです。
「今では息子たちが問題を抱えると、私のところにやってきます。以前は、彼らは隠れていたのです。」
リケオさんの家庭の変化は、伝統的なしつけの考え方が徐々にポジティブ子育て法に取って代わられつつあるカンボジアの、より広範な変化を表しています。一部のコミュニティではいまだに古い考え方が根強く残っていますが、リケオさんをはじめとする何千もの人々が、良い変化を目の当たりにしたのちに、こうした新しい方法を受け入れ始めています。
日が沈む頃、リケオさんはファニスくんの肩にそっと手を置き、メロディカを吹く彼を励まします。緊張した空気はなく、子どもの軽快な笑い声が聞こえるだけです。ファニスくんは音を外すたびに笑います。息子の喜ぶ姿を見て、リケオは嬉し涙をこらえながら優しく微笑みました。
「これが愛の本当の意味だと思います」と彼女は静かに言います。「子どもを従わせることではありません。彼らに寄り添うことです。私たちは一緒に学んでいるのです。すべての子どもたちが安全で、大切にされ、愛されていると感じられる世界を一緒に作りましょう。」

カンボジアでポジティブ子育て法を指導する女性局副局長のチャイ・リケオさん。
写真クレジット:©UNICEF Cambodia/2024/Botumroath Le Bun(現場のストーリーI/II)

 

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